彫刻文化財を保存修復していくためには、まずは対象となる彫刻文化財がどのような材料、技法によって造られているのかを知ることが重要となります。彫刻文化財保存修復研究室で行う授業について紹介します。

1年次

修士1年次には、彫刻文化財の保存修復に必要となる基礎的な技術、知識の習得を目的とした授業を行います。本研究室では、木彫実習、乾漆・塑造実習、彩色実習などを通じて古典技術を学び、保存科学実習、美術史実習において文化財の見方、調査法について学びます。また各実習では、道具の仕立て方、各素材の特性の理解や扱い方などについても学びます。そして保存修復実習では、各実習で習得した技術、知識を踏まえて、実際の文化財を対象とした実習を行なっていきます。さらに文化財保存学専攻共通科目としての演習授業などの必修科目や各種選択科目を通じて幅広く文化財保存学について学んでいきます。

主なカリキュラム

  • 課題研究(材料技法の基礎研究-木造、乾漆造、古典塑造、彩色技法など)
  • 彫刻文化財の修復実習
  • 文化財保存学演習(日本画、油画、彫刻、工芸、建造物、保存科学、システム保存学)
  • 文化財保護概論(文化財保護法や保護行政について)
  • 保存環境計画論
  • 集中講義、調査旅行など(随時)
  • 古文化財研究(古美術研究旅行)
    • 修復実習
    • 木彫実習
    • 実地活動

    2年次

    修士2年次には、1年次に学習した技術と知識をベースに、任意で選択した課題に沿った修了研究を行います。修了研究は模刻制作を通じた研究手法を主としており、研究対象の美術史的調査、科学的調査を通じて研究を深めつつ、木彫実習や乾漆実習で得た技術を駆使しながら、1年間を通じて研究を進めていきます。模刻制作を通じた古典彫刻への理解は、文化財の保存修復を行うための重要な経験となります。ただし、研究の課題や目的によっては、模刻制作以外の研究方法についても選択は可能です。

    主なカリキュラム

  • 課題研究(修了制作)
    • 道具の手入れ
    • 模刻制作
    • 修復の様子

    1〜3年次

    博士後期課程では、研究課題を任意で設定し、最短で3ヵ年を通じて博士研究を進めていきます。研究課題は学生によって大きく異なりますが、調査、研究においては学生が主体となって進め、教員の指導の元で博士課程の研究を深めていきます。3年次(最短)には博士研究の本審査が始まり、厳正なる審査に合格すれば、博士(文化財)の学位が授与されます。

    主なカリキュラム

  • 文化財保存学総合研究
  • 彫刻保存特殊講義
  • 研究領域特別研究指導(課程博士研究、実技および論文の準備)
    • 模刻制作
    • 科学調査
    • 論文発表