彫刻文化財を保存修復していくためには、まずは対象となる彫刻文化財がどのような材料、技法によって造られているのかを知ることが重要となります。文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室で行う授業について紹介します。

木彫実習

木材を加工する技術を学びます。鑿、彫刻刀、鉋、鋸などの道具の仕立て、使用方法などを学びます。彫刻文化財の調査研究に基づいた木彫像の構造、木取り、木割りなどを学びます。樹種ごとに異なる木の特性を把握し、文化財についての理解を深めることで、それらを保存していくための基礎を身につけます。修士1年次の実習では、仏像文化財の造形的特徴を学ぶために、蓮弁や仏手などの模刻を行います。

乾漆・塑造実習

漆を用いた造形表現を学びます。日本では古代において漆を用いた乾漆造や木芯乾漆造と言う技法が隆盛しました。また、全時代を通じて、金箔の下地に漆が使われてきました。乾漆・塑造実習では、漆を扱うためのヘラや定盤などの道具作りから、乾漆造の第一工程となる塑造、そして糊漆による布貼り、木屎漆などを用いて、古代の仏像の制作技術を学びます。各素材の配合や扱い方を習得することで、保存修復への理解を深めます。

保存修復実習

彫刻文化財の保存修復に必要な修復理念、調査手法、記録技術、修復材料知識、修復技術などの基礎的な学習を目的に、実際の彫刻文化財を対象にした実習を行います。また、長期休暇期間に現地での文化財調査などを行う場合もあり、地域の現場での保存環境や臨床的な保存に関する学習なども行います。

美術史実習

保存修復を行うためには美術史的な知識が欠かせません。本研究室で取り組む主要題材である仏像に関する美術史の基礎知識を学びます。仏像の種類、着衣などの時代的様式について学習するとともに、論文の調べ方、読み方、書き方についても学習していきます。

保存科学実習

保存修復には、文化財に使用されている材料、劣化損傷の原因や要因への理解、修復に用いる材料、保存環境などに関する科学的な理解が重要となります。保存科学実習では、彫刻文化財に用いられる材料や修復材料の化学的理解、各種分析機器で得られる情報の理解、検証方法などについて学びます。

3D計測実習及び写真実習

文化財の情報を的確に記録することは、文化財保存修復の基本となります。写真撮影による記録はもちろんのこと、三次元スキャナーによる計測技術、データ処理の方法を学びます。それらのデータは、文化財のアーカイブとして役立つとともに、文化財の比較研究や模刻制作研究においても有効となります。

集中講義

本研究室の客員教授を務める公益財団法人美術院国宝修理所の所長による特別講義、文化庁美術工芸品彫刻部門の奥健夫先生による特別講義をおこなっています。また、学生たちの研究テーマに即した授業を設定し、様々な分野の第一線で活躍するゲスト講師を招いた集中講義を行なっています。

文化財保存学演習

文化財保存学専攻の必修授業。年間を通じて保存科学、保存修復日本画、保存修復建造物、保存修復工芸、保存修復油画、保存彫刻など各科の活動の概要を体験します。