5月9日(水)19:00〜21:00
第1回 博士研究レビュー講座

東京藝術大学大学院文化財保存学彫刻研究室では、2004年以来、仏像を刻む気鋭の実技研究者から、国宝・重要文化財の仏像を中心に、きわめて斬新で独創的な仏像研究が報告され、文化財保存学や美術史以外からも注目されてきました。その結果、昨今の仏像ブームであまた制作される仏像番組や書籍、展覧会とも連携し、毎年のように制作に協力して参りました。

しかしかねてより、ひとりでも多くの方に彼らの研究を紹介する場を作りたいと思ってきました。そこで歴代の博士研究のなかから特に優れたものを抜粋して、その研究内容を中心に、研究過程のエピソード、苦労話、その後の研究の展開などを発表してもらう公開講座を行うことにしました。


会場:東京藝術大学美術学部中央棟 第4講義室
発表者:小島久典Ph.D.(現・教育研究助手)
演題:2014年度博士研究「鎌倉時代の菩薩形像における彫刻制作の計画性とその変更について−東大寺中性院弥勒菩薩立像模刻制作を通して−」を中心に

 平安末から鎌倉時代にかけて大活躍した「南都仏師-慶派」については有名です。しかし、彼らが南都復興を終えて京都に拠点を移し全国的な活動を開始してからは、慶派なきあとの南都では「善派」と呼ばれる極めて技巧的で完成度の高い一連の魅惑的な仏像を造った仏師たちがいました。ただ、彼らの作例は少なく、活動の期間も短かったためか、「善派」は未だに謎に包まれています。

 小島久典は、修士課程に東京国立博物館所蔵菩薩立像(C-20)の模刻制作をし、非常に優秀な成績を収めました。そして博士課程に進み、同像と非常に似通った東大寺中性院弥勒菩薩立像を詳細に研究し、その複雑で不思議な構造と造形の秘密を解き明かしました。そして博士論文として、この像が慶派と善派を繋ぐミッシングリンク(失われた輪)に位置づける画期的な論考を発表しました。そしてその後、彼は教育研究助手として研究室業務に携わりながら、豊富な調査と修復の経験を重ねて参りました。今回の発表では、博士研究だけでなく、その後の研究成果も合わせて発表してもらいます。


 

講座終了後、質疑応答の時間には、お呼びした研究者の方々からの熱のこもったが質問がありました。

 


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