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Online Lecture 14
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2010年10月* The Asiatic Society of Japan /日本アジア協会にて、仲裕次郎先生(非常勤講師)が 当研究室での研究について講演を行いました。その内容(英語での講演)を簡略して掲載します。
The Asiatic Society of Japan /日本アジア協会
Research into the Traditional Japanese Use of Color? ─ Restoring Polychrome Sculptures of Buddha ─ 日本古典彩色の研究 - 仏像彩色の復元 - 私たちは、“古典彩色”という日本の文化財についての一ジャンルの研究を行っています。私たち日本の文化は、ご存知のように,6世紀の中ごろ大陸より仏教文化が伝えられたことにより、大きく発展していくことになります。はるかシルクロードを経て、優れた文物もその技術と共に伝えられてきました。おりしも今年は平城京遷都1300年として、日本では古の文化への関心が高まっています。私たちはちょうどその奈良時代から鎌倉時代の“古典彩色”についての研究をしています。特に仏像を主とした立体造形に施された彩色がどのようなものであったか?私たちは実際に当時の彩色を復元することにより仏像などの造像時の尊容を視覚化する研究を行っています。 1 Japanese Traditional Art Works from the Nara to the Kamakura Period? 日本の古典彩色作品(奈良〜鎌倉時代) <香印座 Koin-za >正倉院御物。奈良時代。 <執金剛神像 Shukongo-jin > 東大寺蔵。奈良時代の天平期。 <法隆寺金堂壁画 Kondo-hekiga > 法隆寺金堂壁画。 <水天図 Sui-ten >十二天の一図。東寺蔵。平安時代。 <室生寺描光背 ita-kohai >奈良県室生寺蔵。平安時代。 <阿修羅像 Standing Ashura >興福寺蔵 。奈良時代の天平期。 2 Introducing main materials of traditional coloring? 古典彩色の材料
今見ていただいた彩色作品はどのような材料で描かれているのでしょう? 絵の具: 絵ノ具は、岩や土また植物などから採取されたものです。 接着剤: 動物や植物から作られた‘膠’です。 支持体: 絵画では、岩や土壁・皮・板・布・紙、に描かれました。 水: そして、これらを結びつける材料が‘水’です。 大陸からもたらされた宝石のような顔料また身近な土や植物からの絵ノ具を用いて、神仏を荘厳してゆきました。 この膠を接着剤にして色料を支持体に定着させていく、膠技法ともいえる彩色技法は、中国やインドまた中東などアジア全域だけでなくヨーロッパやエジプトにも見られる技法であり、汎世界的な彩色の方法です。ヨーロッパでもルネッサンス後半以前には主な彩色技法の一つでした。 身近な自然物から美しい色料と接着剤を採取抽出しそれを水で溶き物を彩る、という行為は、人類が彩ることを始めた初期の技法の一つとされます。それが時代と共に広まりまた洗練され、はるか昔にこの日本にも伝えられました。そして江戸時代までこの彩色技法が主流となりました。
3 Report for our research- restoring polychrome sculpture of Buddha 私たちの研究- 仏像彩色の復元 -
ここからは、近年私たちが行いました研究をご紹介いたします。 私たちは今、日本の奈良時代から鎌倉時代の彫刻にどのような彩色がなされていたのかを研究しています。数百年あるいは千年を超えて、現代に伝えられた仏像は、経年汚損によりその多くは黒ずんで色彩がないように見られます。しかし造られた当時は、金色あるいは極彩色に荘厳されていました。その尊容はどのようなものであったか?その材料は? その技法は?いろいろな角度から研究していきます。 1.新薬師寺 [地蔵菩薩像] 1-1. 現状と目視による観察 Present condition and observation with naked eye 1-2. 光学的調査 Researching of optical investigation. 1-3. 文様の復元図制作 Reconstruction of patterns 1-4. 全体の推定復元彩色の制作 Completion work of assurmed reproduction 最後に、同時代のものから類推される他像の意匠も参照にして調査・研究を総合的に考察し、全体像を復元します。“推定復元彩色図”です。
想定復元彩色図 この研究では、多くの調査を行うことができました。その情報に基づき、このような鮮やかな彩色図にまでたどり着きました。もちろん、いくら調査を行っても、数百年前の全ての情報が解明されるわけではありません。実際に像の尊容を表現するためには、色合いの微妙さや筆遣い、また技法の詳細など、データや数値化された情報では解明できない感性的なしかし大変重要な部分があります。そうした不明な部分は、研究者またはアーティスト自身の感性をもって補うしかありません。古のアーティストとの感性の対話が必要です。そうして得られた結果は、一つの可能性としての結果ですが、日本における中世の仏像の彩色による荘厳の姿をうかがい、その施法を全体的に考察できた事は、今後への希少な研究報告となりました。 このように、当時の材料と仕様を実証的に考察していく中で、鎌倉期の幅広い表現意識を認識する事ができました。 それは合理性に富んだ確かな技法であり時代の新趣の気風をうかがわせるものでした。調査は限定的で試験的な考察ですが尚課題の多い古典彩色研究への一歩となりました。 以上の研究を踏まえて、後四つの研究実例を見ていただきましょう。
2.国宝 金剛峰寺 霊宝館蔵 [矜羯羅童子像] 何度も目視調査を行い、研究を進め 〈条帛〉 〈腰布〉 〈裙-内区〉 〈裙-縁〉
想定復元彩色図 3.国宝 興福寺蔵 [龍灯鬼像]
4.国宝 勧進寺蔵 [ 如意輪観音像 蓮弁] 八部衆の一体ですが、このお像だけが体を失ってしまいました頭部の復元彩色です。
想定復元彩色図
4 研究の意義について ここまで近年の私たちの研究を見ていただきました。 このように私たちは、鎌倉時代までの日本の仏像を主として、その彩色がどのようなものであったかを研究しています。 今では色を失ったかに見える仏たちも、造像時は色鮮やかな尊容をしていたことが分かりました。優れた形を持った仏たちは、その鮮やかな色彩と一体となって存在していたのです。現代ほどには“色”の氾濫していなかったかの時代、豊かな色彩を纏った仏像は人々にどれほどの驚きと畏敬をもって拝されていたのでしょう? 現代に生きる私たちがそれを経験することは難しいのかもしれませんが、“形と色彩”その不可分の造形のすばらしさをこの研究を通して私たちは知りたいと思います。 ご紹介しましたように、この研究には、私たちのような古典彩色技術者だけではなく、彫刻・工芸・建築といった造形の専門家そして各分野の修復技術者、また美術史・彩色史・文様史の研究者、文化財の分析を行う保存科学者や高度な画像処理を担当する工学技術者など、各分野の多くの専門家との密な連携を必要とします。一工程ごとに重ねられる答えと疑問を各分野が協力し総合的に判断して実像へと進めていきます。そうした総合的な研究分野でもあります。これまで不可能であった情報の収集が徐々に可能になり、新たな知見が集積され、互いのさらなる研鑽の成果が期待される分野となっています。今後の協力体制の進化とともに総合的な研究成果が求められています。 わたしたちはこのようにして文化財に関する一ジャンルを研究していますが、研究対象となる古の作品に会うたびに、その造形のすばらしさとともに、長い時を経て今私たちの目の前に在ることのすごさに深く感動します。私たちは文化財を古い物ではなく淘汰された物と考えています。歴史という長く厳しい、人の様々な営みの中で、選ばれ愛され続けられ、はるか現代にまで贈り届けられた物。そしてさらに未来へ往こうとする物。私たちはそれを芸術品と呼んでいます。そうした時空を超えて愛される“力”とは何なのか? その秘密を私たちは文化財を通して自分たち独自の方法で研究しています。今日は、その成果を皆様にお伝えできてうれしく思っております。 最後にこの講演に当たって多大なご協力をいただきましたProf. Colegrove, Prof. Moate, Dr. Maedaに感謝申し上げます。ご清聴ありがとうございました。 |
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